肩関節周囲炎に対する整体・オイルトリートメントの施術アプローチ

肩関節周囲炎(通称「四十肩」「五十肩」)は、肩関節周辺の炎症や拘縮によって可動域が制限され、日常生活に大きな支障をもたらす疾患です。現代医学では整形外科的な保存療法や理学療法が中心ですが、整体やオイルトリートメント(アロマセラピー)による補完的アプローチも注目されています。

本稿では、肩関節周囲炎に対する整体施術およびオイルトリートメントの理論と実際を、臨床的観点から解説します。


1.肩関節周囲炎の症状ステージと自然療法の適応

肩関節周囲炎は一般的に以下の3つのステージを経過します:

  • 急性期(炎症期):激しい疼痛、夜間痛、運動制限が顕著
  • 慢性期(拘縮期):痛みは軽減、可動域制限が強まる
  • 回復期(解凍期):拘縮が緩和し、可動性が徐々に戻る

自然療法は急性期を避け、主に慢性期〜回復期において疼痛緩和と可動域の回復を促進する目的で用います。

2.整体による施術アプローチ

2‑1.評価と触診

整体では、全身バランスから肩関節の異常を評価します。以下のポイントが重要です:

  • 肩甲上腕リズムの乱れ
  • 肩甲帯の筋緊張(僧帽筋・肩甲挙筋・小円筋など)
  • 胸椎〜頸椎の可動性低下
  • 反対側の肩・骨盤のアンバランス

2‑2.施術技法の例

  • 肩関節モビリゼーション
    軽い牽引や振動を加え、関節包や滑膜への過緊張を和らげます。
  • 肩甲帯リリース
    肩甲骨周囲の筋膜(特に肩甲挙筋・菱形筋)を緩めることで、肩甲骨の自由度を取り戻します。
  • 胸椎矯正・肋骨調整
    胸郭の柔軟性が肩の可動域に大きく関係するため、上部胸椎・肋椎関節への調整を行います。
  • 上肢ラインの筋膜リリース
    腕神経叢の走行や経絡の流れに配慮しつつ、前腕〜手指までの筋・腱調整を施します。

3.オイルトリートメント(アロマ)のアプローチ

3‑1.目的と効果

  • 筋肉の緊張緩和
  • 血行促進と瘀血改善
  • 副交感神経優位への誘導(自律神経調整)
  • 精神的ストレスの軽減

3‑2.使用される精油の例

  • ラベンダー:抗炎症・鎮痛・リラックス効果
  • ローズマリー:血行促進・筋肉疲労回復
  • ウィンターグリーン(サリチル酸メチル):局所的鎮痛作用
  • ブラックスプルース:肩甲帯・背中の強張りに対応

※希釈濃度(1〜3%)、禁忌(妊娠中・皮膚過敏)に注意

3‑3.施術手順(例)

  1. 肩甲帯全体を温めながら塗布
  2. 鎖骨〜肩峰〜肩甲骨ラインに沿ってトリートメント
  3. 上腕二頭筋・三頭筋、三角筋周辺への滑走圧
  4. 頸部・後頭下筋群へのリラクゼーション手技を併用

オイルマッサージにより、関節包や筋膜の滑走性が向上し、関節の可動域改善が期待されます。

4.注意点と統合的視点

  • 急性期の炎症強い段階では禁忌:痛みを悪化させる可能性あり
  • オイルトリートメントと整体は相乗的に行うことで血流・神経反射系への効果が高まる
  • 西洋医学的診断(MRIなど)との併用で病態把握の精度向上
  • 高齢者や基礎疾患(糖尿病、骨粗鬆症)を持つ方には個別化された施術計画が必要

結論

肩関節周囲炎に対する整体およびオイルトリートメントは、可動性改善・疼痛緩和・精神的安定の3方向から働きかける補完療法として有効です。施術者は筋骨格構造と経絡・神経・循環の視点を統合し、自然治癒力を高めるアプローチを行うことで、患者の回復力を最大限に引き出すことが可能です。


参考文献・引用

  1. Fritz, S. (2014). Mosby’s Fundamentals of Therapeutic Massage (5th ed.). Elsevier.
  2. Davis, C. P. (2015). Clinical Aromatherapy: Essential Oils in Healthcare. Elsevier.
  3. Greenman, P. E. (2003). Principles of Manual Medicine (3rd ed.). Lippincott Williams & Wilkins.
  4. Hanten, W. P., et al. (2000). A home program of ischemic pressure followed by sustained stretch for treatment of myofascial trigger points that contribute to shoulder pain. Physical Therapy, 80(10), 997–1003.
  5. 日本アロマ環境協会(AEAJ)監修. (2020). アロマセラピー検定 公式テキスト 1級・2級. AEAJ.

SATOセラピストスクール代表
鍼灸師|鍼灸専門学校の教員資格保有

長年にわたる技術指導やスタッフ教育の経験を活かし、「わかりやすく」「実践に取り入れやすい」セミナーの開催を心がけています。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事
  1. 鍼灸治療の禁忌(Contraindications)

  2. かかとの痛み(heel pain)の原因・病態・治療

  3. 肩関節周囲炎に対する整体・オイルトリートメントの施術アプローチ

  4. 肩関節周囲炎(いわゆる“四十肩・五十肩”)の東洋医学的アプローチ

  5. 痛みとは何か:東洋医学と西洋医学の視点

  6. 五十肩診療の実際:鑑別診断から統合ケアまでのアプローチ

Instagram でフォロー
PAGE TOP