五十肩診療の実際:鑑別診断から統合ケアまでのアプローチ

以下に、五十肩(肩関節周囲炎)について、病態、鑑別、検査、治療、自宅ケア、養生法などを専門的かつ包括的に解説します。

■ 五十肩(肩関節周囲炎)とは

● 定義

「五十肩」とは、肩関節の痛みと可動域制限を主訴とする非外傷性の疾患群で、一般的には40~60代に好発することから「四十肩・五十肩」と呼ばれます。正式名称は肩関節周囲炎(frozen shoulder)

■ 病態生理

  1. 関節包や滑液包、腱板の慢性炎症
  2. 線維化や癒着による関節包の拘縮
  3. 痛みによる反射性筋収縮と悪循環

● 進行期の3段階

時期 特徴
急性期(炎症期) 強い痛み(特に夜間痛)、運動痛あり
拘縮期(凍結期) 痛みは減るが、関節の可動域制限が顕著
回復期(解凍期) 徐々に可動域が回復し、痛みも軽減

■ 鑑別診断

疾患名 鑑別ポイント
腱板断裂 外傷歴、筋力低下、MRI所見
石灰沈着性腱板炎 急激な激痛、X線で石灰化
変形性肩関節症 高齢者、X線で骨棘や関節裂隙狭小
頸椎症性神経根症 放散痛、Spurlingテスト陽性
リウマチ性疾患 両肩に炎症、血液検査で炎症所見

■ 検査方法

  1. 問診・視診・触診

  • 夜間痛の有無、腕が後ろに回るか(結髪・結帯動作)
  1. 徒手検査

  • Apley scratch test(肩の可動域評価)
  • Neerテスト、Hawkinsテスト(腱板障害の除外)
  1. 画像検査

  • X線:骨折、石灰化、関節症の鑑別
  • MRI:腱板断裂や滑液包炎の評価
  • 超音波:腱板の連続性や滑液包の状態

■ 治療法

● 保存療法(基本)

  • NSAIDs(消炎鎮痛剤)
  • 理学療法(温熱療法・ストレッチ・関節可動域訓練)
  • 肩甲帯の筋力トレーニング

● 注射療法

  • 関節内ステロイド注射:急性期の疼痛軽減
  • ヒアルロン酸注射:滑液の補充

● 手術療法(稀)

  • 関節鏡視下での関節包解離術など(難治例)

■ 自宅ケア・セルフリハビリ

● 急性期

  • 安静(過度な負荷を避ける)
  • 冷湿布で炎症を抑える

● 拘縮期以降

  • 温湿布、ホットパックで温める
  • タオル体操や壁這い運動(スライド運動)

例:壁這い運動

  1. 壁に向かって立つ
  2. 指先で壁を登るようにして徐々に肩を上げる
  3. 痛みのない範囲で1日数回繰り返す

■ 養生法(予防・再発防止)

  1. 肩関節の保温
  2. デスクワーク中の姿勢改善
  3. 適度な運動習慣(肩回し・ストレッチ)
  4. 糖尿病や代謝異常の管理(五十肩との関連が強い)

■ まとめ

五十肩は自然経過で改善することが多いですが、早期からの適切な対応により痛みの軽減と機能回復が促されます。鑑別や進行期に応じた対応が重要です。

SATOセラピストスクール代表
鍼灸師|鍼灸専門学校の教員資格保有

長年にわたる技術指導やスタッフ教育の経験を活かし、「わかりやすく」「実践に取り入れやすい」セミナーの開催を心がけています。

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