東洋医学における「痰湿中阻(たんしつちゅうそ)」について

【定義】

痰湿中阻とは、「痰湿(たんしつ)」という余分な水分や老廃物が脾胃を中心とする消化吸収系に停滞し、気機の巡りを阻害することで様々な症状が生じる病証です。

「中阻」とは、主に中焦(脾胃)が障害されている状態を指します。

【成因と病理機序】

主な原因:

  • 暴飲暴食・甘味脂肪の過食
  • 運動不足による水分代謝障害
  • 脾虚(脾の運化失調)
  • 外湿侵入(梅雨時や湿気の多い環境)

病理メカニズム:

脾は「運化(飲食物からの水穀精微の生成と水分代謝)」を司りますが、その機能が低下すると「水湿」が体内に滞り、さらに凝滞して「痰湿」となります。この痰湿が「中焦」に停滞すると、清陽不昇・濁陰不降の病態が形成され、「眩暈(めまい)」や「重だるさ」などを引き起こします。

【臨床症状】

症状カテゴリ 主な所見
中枢神経系 めまい・ふらつき・意識のぼんやり
消化器系 食欲不振・腹部膨満・吐き気
全身症状 四肢の重だるさ・倦怠感・頭重感
舌・脈証 舌苔白膩、脈滑または濡

【治療原則】

● 治法:燥湿化痰・健脾利水

湿と痰を除きつつ、脾の運化機能を高めて根本改善を目指します。

● 方剤例:

漢方薬 主な構成生薬 適応例
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう) 半夏、白朮、天麻、茯苓、生姜 など 痰湿によるめまい、頭重感、吐き気など
二陳湯 半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜 軽度の痰湿・湿盛による症状
苓桂朮甘湯 茯苓、桂枝、白朮、甘草 胃内停水・水毒傾向のあるめまい

【養生・生活指導】

  • 食事:脂っこいもの、甘いもの、乳製品、生冷食品は控える
  • 運動:軽い有酸素運動で脾の運化を助ける
  • 環境調整:湿気の多い場所を避け、身体を冷やさない
  • 生活習慣:夜更かしや不規則な食事は脾を傷めやすいため改善

SATOセラピストスクール代表
鍼灸師|鍼灸専門学校の教員資格保有

長年にわたる技術指導やスタッフ教育の経験を活かし、「わかりやすく」「実践に取り入れやすい」セミナーの開催を心がけています。

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