エストロゲン(主にエストラジオール:E2)は、単なる性ホルモンにとどまらず、脳や自律神経系の機能維持に極めて重要な役割を果たしています。以下に、エストロゲンの低下がなぜ自律神経の不調を引き起こすのか、医学的・生理学的に専門的に解説します。
Contents
■ エストロゲンと自律神経系の関係
1. 中枢神経(視床下部)への作用
- エストロゲンは視床下部(間脳)に多くの受容体(ERα, ERβ)を持つ。
- 視床下部は自律神経系(交感神経・副交感神経)と内分泌系の中枢。
- エストロゲンは視床下部の体温調節中枢や睡眠調整中枢にも直接作用しており、その低下が神経伝達物質のアンバランスを引き起こす。
2. 神経伝達物質との相互作用
| 神経伝達物質 | エストロゲンの作用 | 欠乏時の影響 |
|---|---|---|
| セロトニン | 合成促進、再取り込み阻害 | 抑うつ、不安、不眠 |
| ノルアドレナリン | 調節抑制的に働く | 動悸、発汗、興奮 |
| ドパミン | 快感・覚醒系の調節 | 意欲低下、疲労感 |
| GABA | 抗不安系の安定化 | イライラ、不安感 |
3. 血管運動神経症状の発現機序(ホットフラッシュ等)
- エストロゲン低下により、視床下部の体温調節が過敏化。
- 微細な温度変化に対して過剰反応 → 血管拡張(ほてり)と発汗が起こる。
- 同時に交感神経活動が過剰となり、心拍上昇、動悸、手足の冷えなどが誘発される。
■ 症状の実例(更年期自律神経症状)
| 項目 | 具体的症状 |
|---|---|
| 交感神経亢進 | 動悸、発汗、イライラ、血圧上昇、頭痛 |
| 副交感神経低下 | 消化不良、下痢、眠気、倦怠感 |
| バランス障害 | めまい、耳鳴り、不眠、パニック感 |
■ 補足:慢性炎症と自律神経
近年の研究では、エストロゲンの抗炎症作用が低下することで、中枢および末梢神経系に軽度の慢性炎症が波及し、自律神経系の反応性が変化するという説も提唱されています。
まとめ
エストロゲンは視床下部を中心に神経内分泌調整・情動調整・体温調整など複数の神経ネットワークに作用しており、その急激な低下が多様な自律神経症状を引き起こします。
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