瘀血とスラッジ現象の相関関係:東洋医学と現代科学をつなぐ視点から

慢性的な冷え、鈍い痛み、しこりや硬結——。 これらの症状にアプローチする際、東洋医学では「瘀血(おけつ)」、西洋医学では「スラッジ現象」という概念が用いられます。

本稿では、臨床経験豊富な講師として、瘀血とスラッジ現象の共通点と相関関係を、科学的な観点から解説いたします。

スラッジ現象について▽▽▽

瘀血とは、「血の巡りが悪く、古くて流れの悪い血液が体内に滞る状態」を指します。以下のような特徴がみられます:

  • 主な症状:冷え、鈍痛、月経異常、しこり、肌のくすみなど
  • 舌診の所見:舌が暗紅色、瘀点や瘀斑が見られる
  • 原因:気虚、気滞、寒邪、ストレス、外傷、過労など

瘀血は「血の滞り」だけでなく、組織間の循環障害全体を表す広範な病理概念でもあります。

スラッジ現象とは — 西洋医学的視点から

スラッジ現象(Sludge phenomenon)は、血流の低下した毛細血管で、赤血球が凝集して流れにくくなる状態を指します。

  • メカニズム:赤血球がRouleaux(連銭状)に凝集し、血液の粘稠度が上昇
  • 原因:炎症、低体温、低酸素、酸化ストレス、pH低下など
  • 影響:末梢循環の阻害、浮腫、疼痛、組織の酸素不足

この現象は、慢性疼痛、疲労感、組織硬化の発生に深く関与しています。

共通点と相関性の整理

項目 瘀血(東洋医学) スラッジ現象(西洋医学)
根本 血の滞り・質の低下 血流低下・赤血球凝集
主な原因 気滞、寒邪、外傷、過労 炎症、低酸素、pH変化、酸化
症状 冷え、しこり、鈍痛、月経異常 虚血、慢性痛、感覚鈍麻
所見 舌色の変化、瘀斑、経絡の停滞感 毛細血管像、血液粘性、組織虚血
改善法 活血化瘀、温熱療法、刺絡 血流促進、抗酸化、体温保持

このように、病態・症状・対応法において高い相関性が確認できます。

セラピストが活用する臨床知識として

  • 筋膜リリース、リンパドレナージュ、温熱療法などは、瘀血とスラッジ現象の双方に対して有効です。
  • 両者を統合的に理解することで、「冷え・硬さ・重だるさ」といった慢性症状への施術方針が明確になります。
  • 特に筋膜へのアプローチは、滑走性の回復だけでなく微小循環や自律神経の安定にも貢献します。

まとめ

瘀血とスラッジ現象は、それぞれ東洋医学と西洋医学の異なる視点から提唱されながらも、 「血流障害とその慢性影響」という共通の核心にアプローチしています。

両者の視点を融合し、症状の“背景”にある循環の質に目を向けることで、 セラピストとしての施術精度と臨床的成果は格段に向上するでしょう。

SATOセラピストスクール代表
鍼灸師|鍼灸専門学校の教員資格保有

長年にわたる技術指導やスタッフ教育の経験を活かし、「わかりやすく」「実践に取り入れやすい」セミナーの開催を心がけています。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事
  1. 鍼灸治療の禁忌(Contraindications)

  2. かかとの痛み(heel pain)の原因・病態・治療

  3. 肩関節周囲炎に対する整体・オイルトリートメントの施術アプローチ

  4. 肩関節周囲炎(いわゆる“四十肩・五十肩”)の東洋医学的アプローチ

  5. 痛みとは何か:東洋医学と西洋医学の視点

  6. 五十肩診療の実際:鑑別診断から統合ケアまでのアプローチ

Instagram でフォロー
PAGE TOP