セラピストのためのふくらはぎ(腓腹部)のブログ講座

「ふくらはぎが“第2の心臓”と呼ばれるのは、なぜかご存じですか?」

普段あまり意識されないふくらはぎの筋肉ですが、実は私たちの健康維持にとって非常に重要な役割を果たしています。歩行時の血液循環を支えるだけでなく、東洋医学的には気血水の流れを調える中枢ともされ、全身機能の調和にも深く関与しています。

本コラムでは、ふくらはぎの解剖生理から東洋医学的解釈、筋ポンプ作用の科学的メカニズム、そして臨床応用の実際までを総合的に解説します。セラピスト・鍼灸師としての理解を深め、施術の質を高める一助となれば幸いです。

解剖生理学的構造(西洋医学の視点)

ふくらはぎは下腿後面に位置し、主に腓腹筋(gastrocnemius)とヒラメ筋(soleus)で構成されます。この二つの筋肉はアキレス腱(Achilles tendon)を介して踵骨に付着しており、足関節の底屈(つま先立ち)に重要な役割を果たします。

腓腹筋は膝関節をまたぐため、膝の屈曲にも関与します。一方、ヒラメ筋はより深層に位置し、持久的な姿勢維持に貢献します。これらは下腿三頭筋と総称され、日常の歩行、走行、立位保持に不可欠です。

また、ふくらはぎは豊富な静脈叢と筋ポンプ機構により、血液の還流を促進します。これが「第2の心臓」と呼ばれる理由の一端です。

東洋医学的解釈

東洋医学では、ふくらはぎは「足太陽膀胱経」および「足少陰腎経」などの経絡が通過する重要な経路とされます。特に膀胱経は背部からふくらはぎを通って足の小指まで達する流れをもち、「水の流れ」を司ると考えられています。

また、腎経は「精気(生命力)」に関連し、ヒラメ筋近くを通る経穴(太谿・照海など)は生殖機能や代謝、老化の制御とも関わるとされます。ふくらはぎへの鍼灸刺激により、血流改善のみならず、全身的な「気・血・水」の巡りを整える効果が期待されます。

第2の心臓といわれる由来(科学的背景)

ふくらはぎが「第2の心臓」と呼ばれる理由は、筋ポンプ作用にあります。重力に逆らって心臓へ血液を戻す必要がある下肢の静脈還流において、ふくらはぎの筋収縮は静脈弁と協調して血流を押し上げる役割を果たします。

この作用は静脈うっ滞の予防、下肢のむくみ改善、深部静脈血栓症(DVT)のリスク軽減に直結します。特に高齢者や長時間の座位姿勢が続く現代人にとって、ふくらはぎの機能維持は極めて重要です。

なぜ「第2の心臓」と呼ばれるのか? 〜ふくらはぎの筋ポンプ機能〜

心臓は全身に血液を送り出す中枢ポンプの役割を果たしていますが、体の末端、特に足先から心臓へ血液を戻す過程では、重力に逆らう必要があります。ここで重要な役割を担うのが、ふくらはぎの筋肉群です。

■ ふくらはぎの筋ポンプ作用(Calf Muscle Pump)

ふくらはぎ、特に腓腹筋ヒラメ筋が収縮・弛緩を繰り返すことで、深部静脈を圧迫・開放しながら血液を上行させる仕組みを「筋ポンプ作用」と呼びます。この働きにより、ふくらはぎは「第2の心臓」と称されるようになりました。


■ 筋ポンプのメカニズム

◎ 筋収縮による圧迫

歩行や立位時、ふくらはぎの筋肉が収縮すると、深部静脈が物理的に圧迫されます。このとき、静脈内には一方向性の静脈弁が存在し、血液の逆流を防止。その結果、心臓方向への効率的な還流が可能になります。

◎ 弛緩による再充填

筋肉が弛緩すると、圧迫が解除されて静脈が拡張し、再び新たな血液が静脈内に流入。この収縮と弛緩の周期により、まるでポンプのように血液を段階的に心臓へと送り出す構造が完成します。


■ 生理的・臨床的意義

  • 重力下での静脈還流補助:通常の静脈圧では困難な下肢からの血液還流を、ふくらはぎのポンプ機能が補助。
  • 浮腫・静脈うっ滞の予防:ポンプ機能が低下すると静脈圧が上昇し、むくみや倦怠感の原因となります。
  • 深部静脈血栓症(DVT)予防:長時間の座位や手術後の血栓形成を防ぐうえで極めて重要な機能。
  • 全身循環の支援:ふくらはぎからの還流が増えることで、心臓への静脈還流量が増え、心拍出量の安定にもつながります。

ふくらはぎの筋ポンプ作用は、単なる局所的な運動器機能ではなく、全身の循環生理における生命維持機構の一部と考えることができます。

 

高齢者や生活習慣との関係

高齢者は筋量の減少(サルコペニア)によって、ふくらはぎのポンプ機能が著しく低下します。また、デスクワークや立ち仕事などで長時間同じ姿勢を保つ現代人も、機能低下のリスクが高まります。

◎ 臨床的対応:

  • 徒手療法(マッサージ、指圧)
  • 鍼灸(承山、承筋、太谿などの経穴刺激)
  • 筋トレ・ストレッチ指導
  • 弾性ストッキングの着用指導

セラピスト・鍼灸師における臨床応用

ふくらはぎに対するマッサージや指圧、ストレッチ、鍼灸は、局所的な筋緊張緩和や血流改善だけでなく、全身の生理機能向上を導く可能性があります。冷え性や月経不順、自律神経失調など、幅広い症状に対して施術対象とされます。

また、解剖学的知識を持ったうえで経穴を選定することで、より効果的かつ安全な施術が可能となります。


まとめ

ふくらはぎは単なる下肢の運動器ではなく、解剖学的には血液循環を担うポンプ機能の要所、東洋医学的には気血水の通路として全身を調える拠点と位置づけられます。

その機能低下は、むくみ、冷え、循環不全、慢性疲労、さらには深部静脈血栓症といったリスクに直結します。だからこそ、ふくらはぎをケアすることは、全身の健康を支えることに他なりません。

日々の臨床でこの「第2の心臓」に注目し、クライアントのQOL向上に役立てていきましょう。

SATOセラピストスクール代表
鍼灸師|鍼灸専門学校の教員資格保有

長年にわたる技術指導やスタッフ教育の経験を活かし、「わかりやすく」「実践に取り入れやすい」セミナーの開催を心がけています。

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