【プロフェッショナル向け】鍼灸の効果・効能の解説

慢性的な痛みや自律神経の不調に対して、薬に頼らない選択肢を求める患者が増えています。そんな中、エビデンスに基づいた『鍼灸療法』が注目されています。

鎮痛作用(疼痛緩和)

  • 鍼刺激により内因性オピオイド(エンドルフィン、エンケファリン)の分泌が促進され、鎮痛機構の活性化が確認されている。
  • 中枢神経系および脊髄レベルでの下行性疼痛抑制系の賦活。
  • 慢性疼痛(腰痛、頸肩腕症候群、変形性関節症、線維筋痛症など)に対し、RCTやメタアナリシスにおいて一定の有効性が報告。

自律神経調整作用

  • 鍼刺激は交感神経緊張の緩和および副交感神経活性化に寄与。
  • 心拍変動(HRV)の改善、ストレスホルモン(コルチゾール)の低下が観察されており、不安・不眠・過敏性腸症候群(IBS)などの自律神経関連症状に応用。

抗炎症作用

  • マクロファージおよび好中球の活性を調整し、サイトカイン(IL-6, TNF-αなど)レベルの低下が報告。
  • 慢性炎症性疾患(例:変形性関節症、リウマチ、アトピー性皮膚炎など)に対する補完療法としての可能性。

血流改善作用

  • 局所および全身の血流量増加(Laser Doppler Flowmetryにて評価)により、冷え症、末梢循環障害、筋緊張性頭痛、肩こりなどに有用。
  • 血流改善による組織修復促進や疲労回復効果も含む。

消化器・内分泌系への作用

  • 消化管運動の調整:迷走神経を介した胃腸蠕動の促進または抑制(症状により異なる)。
  • ホルモン分泌調整:月経異常、不妊、更年期障害などに対する介入。GnRH、LH、FSHへの影響が報告。

免疫機能調整作用

  • NK細胞活性の上昇、白血球増加など免疫賦活効果。
  • がん患者の補完医療、化学療法副作用軽減(悪心・嘔吐、疲労など)としても利用される。

精神・神経疾患への応用

  • うつ病、不安障害、PTSDなどに対する補助療法として研究中。
  • 鍼刺激がモノアミン神経系(セロトニン、ノルアドレナリン)に作用する可能性が示唆。

🔍 臨床応用例(疾患別)

疾患・症状 エビデンスレベル 使用される経穴例
慢性腰痛 高(GRADE B) 腰陽関、腎兪、委中
片頭痛 中〜高 百会、風池、合谷
不眠症 神門、安眠、心兪
更年期障害 関元、三陰交、命門
悪心・嘔吐(化学療法) 内関、中脘、足三里

🧠 補足:安全性と禁忌事項

  • 鍼灸は比較的安全とされるが、気胸、感染、血腫等のリスクを伴うため、解剖学的知識と衛生管理が不可欠。
  • 抗凝固療法中の患者、出血傾向、妊娠初期の特定部位(腹部・腰部)への施術は慎重に判断する必要あり。

📌 まとめ

鍼灸は、疼痛緩和、自律神経調整、免疫活性など多面的な効果を持つ、安全性が高く補完・代替医療として実用性の高い療法です。医療従事者としての臨床判断と併用することで、患者のQOL向上に大きく寄与します。

SATOセラピストスクール代表
鍼灸師|鍼灸専門学校の教員資格保有

長年にわたる技術指導やスタッフ教育の経験を活かし、「わかりやすく」「実践に取り入れやすい」セミナーの開催を心がけています。

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